トランポリン王国の礎
王国と称されるほど、トランポリンが盛んな石川県。
その礎を築いたのは、金沢学院大学名誉教授の塩野尚文氏です。塩野氏は、「ママさん教室」を通じてトランポリン人口の裾野拡大に努めるとともに、教室に母親と一緒に来た子供達の中からトランポリン選手の候補を発掘し日本のトップレベルへと育て上げました。
また、「シャトルゲーム」と「バッジテスト」を考案しました。「シャトルゲーム」は、2台のトランポリンで二人の選手が交互に跳びながら、一つずつ技を増やしていくもので、全国スポーツレクリエーション祭の種目に採用されています。自分の上達ぶりをチェックできる「バッジテスト」は、才能ある選手の発掘の場にもなっています。
塩野氏は競技スポーツと生涯スポーツの両面で普及活動に取り組み、石川を全国に誇るトランポリン王国へと発展させました。
トランポリン王国の実力
トランポリン競技の日本一を競う全日本トランポリン競技選手権大会の成績を見ると、女子個人では半田玲子選手、古章子選手がそれぞれ9連覇しているほか、直近10年間で県関係選手が8回優勝しています。
また、男子でも福井卓也選手が5回、中田大輔選手が7連覇、伊藤正樹選手が3連覇を含め7回優勝しています。直近10年間では、伊藤選手の4回を含め県関係選手の優勝は6回を数えます。また、団体競技やシンクロ競技でも、常に好成績を挙げています。
日本体操協会のデータによると、石川県はトランポリン競技の登録指導者数やコーチ数、普及指導員数の15%前後を占めています。国内総人口の1%に満たない石川県にこれだけの指導者がいるということからもトランポリン王国の底力が感じられます。(*データは日本体操協会2020.3現在)
オリンピックのトランポリン競技
トランポリンが五輪競技となったのは2000年のシドニー大会からで、オリンピックでは個人だけが行われます。男女16人ずつが出場し、予選は規定を含む10種類の跳躍を行う第1演技と、自由演技の第2演技の合計点で競い、決勝は上位8人が予選の得点を加味せず1回勝負で争われます。
これまでの日本選手の最高順位は、女子は古選手(シドニー大会)の6位、男子は伊藤選手(ロンドン大会)らの4位となっています。
石川から世界へ
すでに東京オリンピック出場が内定している森ひかる選手(金沢学院大学クラブ)は、2019年の世界トランポリン競技選手権大会で優勝、同じく男子の堺亮介選手(金沢星稜大学OB)も5位入賞を果たしています。また、東京五輪候補に宇山芽紅選手(金沢学院大学OG)、佐竹玲奈選手(かほく市出身、星稜高校OG)、岸大貴選手(小松市出身、金沢学院大学OB)が入っています。
東京オリンピックでのメダル獲得は日本トランポリン界、そして、トランポリン王国石川の悲願であり、地元選手への期待はますます高まっています。