贈り物の包み紙や封筒などを飾る日本の伝統工芸、水引。飾り紐としてだけでなく、アクセサリーやインテリアなどにも使われています。
金沢オープン大会等の優勝者へ贈る水引トロフィー製作にご協力いただいた株式会社自遊花人さんに、水引のこと、スポーツ×文化体験の取組についてお聞きしました。
■お答えいただいた方
廣瀬由利子(ひろせゆりこ)さん 株式会社自遊花人 代表・水引作家
石丸睦美(いしまるむつみ)さん 株式会社自遊花人
お店の歴史を教えてください
20年以上前になりますが、ニュージーランドに移住した知人から、海外の方々との文化交流のため水引を教えてほしいとお願いがあったことが、水引を始めたきっかけです。それまでは水引細工を作ったことはなかったのですが、多くの方との出会いがあり、水引を教えていただくことができました。そこで覚えた水引は、ニュージーランドの方々にすごく楽しんでいただけて、その後も島内を一周するくらいいろんな場所で、何回もワークショップを行うことになりました。
文化交流が終わり、金沢に帰ってきたときに、水引の材料がたくさん余っていましたし、せっかくあわじ結びを覚えたので、何か作りたい気持ちになりました。独自で水引を勉強し始めながら、まずは気軽に、生活の中に可愛いものを取り入れたいと、水引を使って普段使いできるものを作りました。一人でやるより皆で楽しくやりたいと思い、母のお花の稽古に来てくださっている方々と一緒に作り始めました。その時は仕事にしようとは思っておらず、10年ほどお花教室の方々に教えながら一緒に作っていました。そのうち、せっかく作ったものをどこかお店に置かせてほしいと思うようになり、お土産屋さんや、県市の施設で売っていただいたことが始まりです。そして2011年9月、犀川沿いにギャラリーをオープンしました。
水引体験について教えてください
5年ほど前から体験教室を開いてほしいと声をかけていただくようになりました。最初に声をかけていただいたのは、公民館や小中学校からでした。子供たちは自由なアイデアで、こちらが想像もしなかったような面白いものを作るので、私たちもいつも楽しみながら教えています。また、ギャラリーでアクセサリーや箸置きなどの小物のワークショップを開いているほか、出張教室も行っています。最近は、家の中で楽しめる水引キットも人気です。皆さん、ご自分で動画を見ながら作って楽しんでくださっています。
スポーツ大会×水引体験について
スポーツ大会の参加者向けに水引体験を教えてほしいとお聞きした時は、組み合わせが新しいと驚きました。ですが、スポーツと文化は動と静、真逆なイメージですが、集中して取り組むことは同じだと思います。スポーツをする方々に水引に触れてもらい、興味を持ってもらえたらうれしいです。
また、2021年のなごみバレーボール大会は新型コロナウイルス感染防止のため中止になってしまいましたが、コミッションさんが選手の方々に水引キットをお送りして、金沢に来られなかった残念な思いをフォローされていたのは、まさに水引の、人と人、心と心を繋ぐご縁だなと思いました。なごみバレーボール大会は、70代以上の女性が出場する大会とお聞きしていますが、ご家族で動画を見ながら仲良く作っていただく場面に繋がったことをうれしく思います。
水引トロフィーを制作して思ったこと
制作のお話をいただいた時は、これまでにない新しい形を作れるととても嬉しかったです。水引の素材は紙ですし、丈夫さなどに不安はありましたが、工夫次第でなんとかできると思いました。これまでは水引だけを使って製作していましたが、今回は他の素材と組み合わせるため金具を使用し、水引だけで作るより綺麗に造り上げました。ひとつひとつ新しいことが勉強で楽しいです。今回、色選びや素材についても、桂記章株式会社さんなどいろいろな方と協力しながら制作しましたが、関わる人が多くなると作品はよくなると感じました。トロフィーが完成した時の喜びはひとしおでした。6種類製作したので、大会や参加者のイメージに合わせたトロフィーをお贈りし、金沢ならではの大会に優勝した記念として、選手の皆様に喜んでいただけると嬉しいです。