金沢は今なお武家文化が息づくまち、その精神が「文化」や「武道」に受け継がれています。石川県立武道館の役割や、武道への思いについて、今も柔道着で稽古に励む、柔道四段 徳田伸一館長にお聞きしました。
■お答えいただいた方
徳田 伸一(とくだ しんいち)さん
石川県立武道館 館長
略歴
・金沢大学教育学部高等学校教員養成課程(保健体育)卒業(柔道部キャプテン)
・金沢錦丘高校教頭、県体育協会事務局長、県スポーツ健康課長、金沢伏見高校校長を歴任
石川県公立武道館協議会会長、全国都道府県立武道館協議会理事、日本武道学会北信越支部理事、石川県柔道連盟参与
柔道四段、剣道初段
県立武道館について教えて下さい。
武道愛好者による活用と日本古来の伝統文化としての武道振興に資するという目的で、金沢市小坂町地内に昭和53年(1978年)9月に竣工しました。建物の一部には、石垣(金沢城と同じ赤戸室石)、白壁、狭間、黒瓦など、城を思わせる城郭建築も用いられており、そうした日本の歴史や奥深さを感じながら稽古ができる場として、多くの方々に愛され、親しまれ続けてきました。
五階建ての本館には柔道場(三面)、剣道場(四面)、弓道場(近的・遠的)、また、本館横には屋内相撲場(本土俵一面・練習土俵二面)、そして、分館として兼六園弓道場、卯辰山相撲場を有し、各施設では各種大会の他、強化練習、講習会などが行われています。
本館上層階から見える四季折々の医王山の姿や金沢駅方向の夕焼け、そして、敷地内の見事な紅葉など、当館ならではの絶景は、稽古の疲れも癒してくれます。
玄関ロビーでは、書初め、節分、五月人形、鯉のぼり、七夕飾りなど、日本の伝統行事をその時期に合わせて紹介しており、来館者の皆さんから「季節を感じる」など好評をいただいています。
また、2022年5月に「武道ライブラリーコーナー」を開設しました。武道関係の雑誌、入門書、エッセー、評論など、気軽に武道に親しんでいただける場としました。絵本も並べ、子育て世代の皆さんからも喜ばれています。
当館では武道教室(柔道、剣道、弓道、なぎなた)を開催し、子どもから大人まで武道を楽しんでいただけるよう指導しています。特に子どもたちに対しては、技術のみならず「挨拶」や「思いやりの心」など人間形成についても丁寧に指導することとしています。
年間を通して教室生を募集しており、全くの初心者でも安心してご参加いただけます。
館長の武道に寄せる思いについてお聞かせください。
【武道の持つ力を多くの人に】
日本の素晴らしい伝統文化である武道を受け継ぎ、発展していく場所としての当館の基本的スタンスは今までと変わるものではありません。そうした中で、私は現代において武道に励む意味は、人間形成や自己啓発、目標達成(段位、試合成績など)、生きがい・健康づくりなど、その人の豊かな人生、幸せな人生を追求していくための方策の一つではないかと考えています。
もちろん勝敗を競うことにも重要な意味もあり、また、日々の稽古のモチベーションにもつながるものだと思いますが、それのみが武道に励む目的となった場合、実にもったいないことではないかと思います。武道の素晴らしさ、面白さ、奥深さをぜひ多くの皆さんに味わっていただきながら、豊かな人生、幸せな人生につながれば、現代において武道に励む意義も一層高まるものと思います。
まさに武道には大きな力があり、この「武道の持つ大きな力」を一人でも多くの方に享受していただきたいというのが、これまで武道にかかわってきて思うところです。
【外国人にも親しんでいただける武道館へ】
武道精神を含め、その魅力に惹かれる外国人も少なくありません。金沢は、加賀藩から続く歴史と文化が現代にも息づき、世界的にもその注目度は高まっています。この武家文化を体感することができる金沢という特別な舞台で、県内在住の外国人や訪日外国人旅行者が日本の伝統文化である武道に触れていただくことは、極めて魅力的かつ意義あることだと思います。そのことは、武道そのものの理解にとどまらず、より深く日本や日本人に対する理解も深まるものと考えます。
そうした中、スポーツ庁が推進する「武道ツーリズム」についても、城をイメージする城郭建築が用いられるとともに四季折々の自然を感じることができる当武道館がお役に立てれば幸いなことと思っています。
金沢には「金沢文化スポーツコミッション」という豊富なノウハウと多方面にネットワークを有する非常に心強い組織があります。「武道ツーリズム」の実施に向けても、その存在感を示していただけるものと期待しています。
当館としても職員一丸となって、ハード・ソフトの両面から安心・安全でより使いやすい武道館を目指してまいります。
もっと詳しいSTORYは、こちらからお読みください。
武道への思いfull version